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レクサスの華 LEXUS SC 430

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 (2018年8月撮)

 
 
 
”レクサスの華” Lexus SC430 
 

初冬の伊豆高原

屋根を大きく開け放ち スローなジャズを流しながら ところどころ黄色や紅に色づき始めた樹林の中をゆく。

行き交う車は少ない。

信号機のない高原道路を40~50㎞で悠揚と走り抜ける時 さっき置き去りにしてきた街の喧騒を もう忘れている。
森の冷気と木漏れ日が全身に降り注ぐ中 ゆるやかにアップダウンを繰り返すワインディングを辿る。“スポーティー”というよりは  むしろ重厚感たっぷりの”ゆとり”とも言うべき味わいを楽しんで。
 
半島の尾根伝いに森を縫って走るこの道は 時折左右に視界を開く。
雄大にそびえる富士を背に南へ下れば 片や 傾きかけた陽光を照り返してギラギラ輝く駿河湾 片や静かに広がる相模湾  そして前方間近に浮かぶ大島。木間隠れに それらの景観が交互に現れる。
箱根連山から走り継いで伊豆の山々を縦走。コンバーチブルの解放感にほくそ笑み 目的地のない浮遊感に身を任せる。束の間の静寂 いくばくかの贅沢に浸りながらゆくのだ。
これはそういう車。
 
レクサスSC430(FR/6AT)/GS350(FR/6AT)/GS430(FR/6AT)【試乗 ...

 

さてと ここまではいい。
だけどって話ね。
現代の都市生活において 車の屋根を開け放って走る贅沢感なんぞは 他になかなか代えがたいもんがあるよね。高級車を駆る贅沢もあるが それとはまったく質を異にする喜び 心の解放を全身で感ずるはずなんだ。
だけど悲しいかな 日本でコンバーチブルの心地よさを味わうには おのずと場面が限られてしまうって現実が。
そうなんだよ
真夏の炎天下 灼熱の太陽の下に出てゆくバカはいないし そぼ降る雨もダメ。
おまけに 都市部ではどこも渋滞が激しいうえ 信号が多く短いストップアンドゴーの繰り返しときている。
トンネル内に入ろうものなら 耳をつんざく轟音とともに 排気ガスのシャワーを全身に浴びることに。
なあんだ これじゃあコンバーチブルを楽しむどころじゃないじゃないか。
そう ここはカルフォルニアじゃないんだから。
 
ワインディングロードといったって 信号のない緩やかな田舎道なんて 北海道以外には少ない。それどころか 本州のほとんどの山間部は 急峻で かつRの小さい山坂が多い。ライトウェイトスポーツでシフトチェンジやハンドリングを楽しむなら別だが コンバーチブルで悠然とドライヴとは なかなかいかないんだよ。
 
SC430の弱点や故障。【部品屋の視点】で解説するよ | 部品屋のウラ話

 

そんなこんな 果たして  年間で何回オープンにして走れるのか。
暑くてもダメ。雨でも渋滞でもトンネルでもダメ。
まあ そもそも街中じゃ気恥ずかしくて 開けてなんて走れやしないけどね。渋滞にハマっているザマもカッコ悪いけど 信号で止りでもしてごらんよ 歩行者からジロジロ見られるじゃないか。裸で街を歩くようなもんだぜ。
 
ただし  寒さがダメかと言えば そんなことはない。むしろ冬の寒気の中 屋根を開け放って走るのがまたオツってもんだ。ヒーター/シート・ヒーターを入れれば防寒さえいらないくらいなんだから。
そう ”ダンティ”とは 時にヤセ我慢も必要ということでもある。どっちみち自己満足の極致なんだからそれでいいんだ。冒頭に述べたシチュイエイションだって 誰も見てないあんなところだからこそ 多少のキザも許されるってもんだからね。
 

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SCの”S”は Sprotsの”S” だという。
”Sorts Coupe”
しかしこの車は ”スポーツカー”じゃないね。大柄で重く スタートから巡航速度程度まででは むしろ”鈍重”とも言える。
実は 高回転域ともなれば爆発的パワーを発揮するということだが ブレーキ性能やハンドリングはそれを制御するようにはなっていないらしいし また そもそもそんな高回転を乗りこなせる人も多くはないだろう(発売当初から レースにも参戦していたくらいだから元々ポテンシャルは高い)。
 
つまり レクサスが”Sports”と名付けた意図は その”風情”を言っているんだろうね。
スパルタンなスポーツカーとはまったく別次元のものだ。
「美しさ」と そして控えめでありながらも 「 華やかさと優雅さ」を謳い  「ドライブする爽快さをも味わってください」というもんだ。控えめってところが粋じゃないか。
レクサスではこれを 「レクサスの華」と呼んだんだね。
ラグジュアリーではあっても フォーマルウェアではない。
「休日用のスポーツウェアなんですよ」と。
”クーペ”で”コンバーチブル”という 紛れもない遊び要素と 全体の流麗なボディラインがそれを見事に表現しているよね。
 
SC430の弱点や故障。【部品屋の視点】で解説するよ | 部品屋のウラ話

 

デザインはね スポーツカーの常道として「ロングノーズ・ショートデッキ」を一応は踏襲していて 全長に対して小さいキャビンを載せている。実質2シーターで 大きな2枚ドアに加えて 比較的ロウダウンに設定されている。
でもね まずこの「大きな2枚ドア」
これはカッコいいんだけど 駐車スペイスはだいたいどこも狭いんだよね。気を遣うんだ。自分が開けるとき 大きなドアが邪魔になる。シート位置が低いから ドアは大きく開けたいじゃないか。
こんなデカいドアはアメリカ向けだからなんだね。BMWでもメルセデスでも最近のヤツは4ドアが多い。それは狭い日本向けだからだ。
その「アメリカ向け」でスポイルしているのが「4人乗り」だ。
全体のデザインからしていかにもスポーツカー然としているし パッと見た目にも二人乗りにしか見えない。それでよかったのに ナゼか後ろにシート"らしきもの"がついている。
一見「手荷物置き場?」 かと思いきや 実は法律上4人乗りなんだと。だから後席があるんだと。アメリカでは2人乗りだと税金がボンと跳ね上がるんで 無理に4人乗りにしたということらしい。
結果ほんとに無理しちゃった。なんと バックレストが垂直に立ち上がってしまった! 座れないシートなんだよ。もう笑うしかないよね。
 
Lexus SCは こんな具合に実用性は度外視した「 オシャレでエレガントなお散歩用馬車(クーペ)」という描きなのだ。(実用性を度外視! これぞ贅沢の極みじゃないか!)
だからね SCを”鈍重”と感じてしまう人は そもそもがこれに乗る人ではないということなんだな。
 
それから コンバーチブルという括りで言うと SCの屋根がメタルトップである点も重要だな。
コンバーチブルってのは言うまでもなく 屋根をオープンして走るもんであり    それでこそ恰好いいわけだ。
ところが残念なことに 日本の現実は屋根を閉めている時間がほとんどじゃないか。雨も多く 渋滞も激しい。ならば  クローズ状態でも恰好良くなければならないよね。
なのに多くのソフトトップ・コンバーチブルは  そこでデザインが損なわれてしまっている。ソフトトップを組んだ時が美しくないんだよね。中には 出来の悪いカツラかぶってるみたいなのもある。
(最近は目ざましくよくなってはきてるけどね)。
 

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車の楽しみ方は千差万別十人十色。最新鋭マシンのスペックを読み込んで走りを夢想する人から 旧車をこつこつリストアして愛でる人まで。
 
私がSCに乗る唯一の理由。
それは 屋根を開け放って ワインディングを穏やかにたゆたう浮遊感に浸る。
これに尽きる。
束の間の贅沢。たまに味わう特別な時間と空間。
まさに愉悦であり至福であるんだね。
 
Lexus : SC430 | Sumally (サマリー)

  

良い点
何より "美しい"
そして"屋根がオープンする"
これが"すべて"と言ってもいい。
 
ノーブルでエレガント
奇をてらったところがない
ボディラインが柔らかい
特にお尻のラインが素晴らしく綺麗
車全体が”ラグジュアリー”でありながら ”これ見よがし”な嫌味がない
いちおう”スポーツ”を謳っており ”ロング・ノーズ/ショート・デッキ”のセオリーを踏襲してはいる。しかし それは極端でなく 上品で程よいバランスに収まっている
そして屋根が開く
あらためて惚れ惚れするね
 
とは言え
これで”高級車”? という難点も
道路の段差超え
”バスン” ”バスン”と ショックが大きく 品がない
ランフラットタイヤはもっともっと改良されなければ
静粛性が足りない
屋根クローズ状態においても ロードノイズが意外と大きい
”音もなく” ”滑るように” という走りではない
せっかくのマークレビンソンのオーディオだが 音楽だけが気持ちよく聞こえているというわけにはいかない。
屋根が閉まる際 屋根枠が後ろからウィーンとせり上がってきて フロントピラーにドッキングする。この時 「バシャッ!」という音。これが下品。
EOSの場合は ドッキングの寸前 一瞬動きを止め そこからやおら動き直し スッと静かに収まるという”おしとやかさ”があった
ダッシュパネル(この車の仕様はブラックアッシュというのか)
この木目模様? これ木目なのか? 一瞬 うっすらホコリを被っているのかと見まごうばかりに かすかに浮かぶ木目?
シートの赤に対比させた黒なのだろうが これはNG
(パネル色は他にも何種類かある)
リアトランクのスポイラーは無粋 不要
ほとんどのSCがこのオプションをつけているのは どういうわけか
いくら純正とはいえ せっかくの綺麗なラインに わざわざ "とってつける"センスがわからない
ボディカラーのコスモシルヴァーと真っ赤な革シートは似合っている
(白じゃなくても良かったかな)
 
 
LEXUS SC430は 生産終了から8年。
それでも 依然と その楚々とした美しさを控えめに主張している。
 
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