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●これは クエンティン・タランティーノのノスタルジックメモリィとでもいおうか 言ってみりゃ 「夏休みの絵日記」だね。
(知らない人が見ても 分からない というかつまらないかもしれない)
 
1969年のハリウッド。
TV映画の台頭と それに押されて陰りを見せ始めた映画産業。実際に起きた女優シャロン・テイト惨殺事件をベースとして 当時の若者がこぞって傾倒したヒッピー文化を織り込ながら語る。
 
往時の映画スターやポップスターたちを実名で登場させるだけでなく ハリウッドの街並みをできるだけ再現したり(街路 広告版 店舗 ポスターにいたるまで) 更にそこへ懐かしの車(今から見ればヴィンテイジカー)たちをふんだんに配置したりして(なんと用意した車両の数2,000台と!) タランティーノ自身が あの時代を慈しみ 楽しんでいることが伝わってくる オモチャ箱みたいな映画だ。

レオナルド・ディ・カプリオ / ブラッド・ピット
この 今を時めく大スターを起用して(初共演だそう) 架空の映画スターを演じさせつつ 実在の シャロン・テイトだの ロマン・ポランスキィだの スティーブ・マックイーンだの キャス・エリオット(=ママス&パパス)だの ブルース・リーだのと 当時のスターや監督たちを散りばめている。
(実名で登場と言っても 中には説明もないままソックリさんが済ました顔で演じている人も。『みんな知ってるに決まってる』が前提なんだね)
 
  
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●ヒッピー
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タランティーノ自身はヒッピーには反感を持っていたのかもしれない。劇中 ヒッピーに対する侮蔑をディ・カプリオが吐き捨てるように言う場面を再三挟んでいる。

大ヒット「California Dreamin‘』も 本家ザ・ママス&ザ・パパスではなく ホセ・フェリシアーノヴァージョンを使っている辺りもしかり。ザ・ママス&ザ・パパスはヒッピー文化の象徴のような存在だったからね。
実際 シャロン・テイト殺害事件を起こしたのはチャールズ・マンソンというカルト集団のボスで そこはヒッピーの巣窟だった。事件はお金持ちハリウッドセレブに対する破壊行為にも映った。
映画の最後で そのヒッピーたちがセレブの大邸宅(ディ・カプリオの家)を襲撃する。これに対するディカプリオやピットの反撃がすさまじい。過剰なほどの暴力で もうマンガ(火炎放射器ブッ放す!)。きっと みんなでゲラゲラ笑い飛ばしたかったんだろう。
 
●映画俳優
劇中では TV俳優として落ち目になったリック・ダルトン(架空)=レオナルド・ティ・カプリオの"もがき"と それを公私にわたり"支える"スタントマン兼運転手兼親友のクリス・ブルース(架空)=ブラッド・ピット この2大スターによる男の友情を芯としたバディム―ヴィなのだが タランティーノは "映画スター"を使って"映画スター"というものを浮彫りにしたかったようだ。
 
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ディ・カプリオ(リック)は かつての"人気俳優"の立場からずり落ちはじめ 演技についても自信を無くしている。女々しく 繊細に傷つき 悲観し 酒を浴び しかし苦闘しながらも再起しようともがく。そんなズタボロのスターというものを 違和感なく演じている。

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一方のピット(クリス)は 影武者ながら俳優としても人間としても自然体で悠々と生きいている。常に友の傍らにいて しかもさり気なく励まし続ける。性格はさっぱり 喧嘩にも強く友情にも厚いという典型的タフガイだ。ちょっとカッコ良すぎなんだけどね。

 
撮影所での一コマ。
そのころ注目を集め始めていたブルース・リーむろん別の俳優)が スタッフ相手に自分の武術自慢をしている。居合わせたピットがそれをせせら笑う。カチンときたリーが自信満々で腕試しを挑むのだが これをピットは軽々と投げ飛ばしてしまうのだ。
(あのブルース・リーに対して そんな軽い扱いしちゃうんだ!)
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 更に 金の無いピットはトレーラーハウスに住んでおり  そこでアメリカン・ピットブル(闘犬用犬種)を飼っている。

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このワンコに 帰宅したピットがぞんざいにエサをやるシーンが再三出てくる。エサはビッグサイズの肉缶。グイグイと缶を開けてドバッとボウルに落とす。ワンコの目はもちろん餌に釘付け ジッと見つめている。そしてもったいぶったピットの合図でようやくエサにありつく というルーティーンが展開する。
そしてこのワンコがまた なんともとぼけたマヌケ面なのだ。見ているこっちは ただエサを待っているだけのバカ犬でも ピットの癒しにはなっているんだなあ と思わされる。
ところがだ。映画の最後の最後 このワンコが本領発揮する。ピットが暴漢たちに襲われるシーンで 突如 獰猛な反撃を繰り出して大暴れする。そう ただのマヌケなバカ犬ではなかった。実は 高度に訓練され命を賭して主人を助けるという 闘犬だったのだ。しかもピットが自分で訓練したはずだから 隠し玉にこんな犬を飼っていただなんて やっぱりカッコ良すぎだろ ブラッド・ピット
タランティーノの演出 さすが!
 
タランティーノはピットを評して 「マックイーンのように ただただ見ていたいスターなんだ」と。
 
ウェスタン』(1968年)
    原題"Onece Upon a Time in The West"
『ワンスアポンナタイムインナメリカ』(1984年)
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セルジオ・レオーネはずっとハリウッドに憧れていて イタリア人でイタリアにいながらアメリカ風の西部劇を撮っていた。そこへクリント・イーストウッドが流れて行って 『荒野の用心棒』を撮ったところ これが世界的に大ヒット。続いて『夕陽のガンマン』『続・夕陽のガンマン』と連続大ヒットさせた。
そんなこんなの大成功をもって 二人ともが それぞれハリウッドへ進出した(イーストウッドは帰ってきた?)という経過がある。
 (もっとも『荒野の用心棒』は 黒澤明の『用心棒』のパクリだと 後に訴訟を起こされ 負けている)
 
『ワンスアポンナタイムインハリウッド』(2019年)の題名。これは当然 レオーネの上記2作"Onece Upon a Time in The West"『ワンスアポンナタイムインナメリカ』をもじったものだ。
つまり この映画はセルジオ・レオーネに捧げるオマージュと言えなくもない。中身はまったく違うので まあ ダジャレみたいなもんで おチャラけているわけだが。 
 
二人ともTV映画からスタートを切った大スターという共通点がある(生まれも同年)

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マックイーンは TV映画『拳銃無宿』で一躍有名になり その後順調にハリウッドの大スターへと登り詰めた。本作中の設定でディ・カプリオは TVシリーズ『賞金稼ぎの掟』でスターになったことになっており この点マックイーンをなぞっている(『拳銃無宿』は賞金稼ぎ)

本劇中で "スティーブ・マックイーン"をちょこっと登場させている(むろん本人ではない) しかしこれがなぜか 他人のゴシップをペラペラ喋るだけの男で 知らない人は『誰だコイツ?』程度の扱い。

先のブルース・リーといい マックイーンといい こんな軽い扱いでいいのかと思ってしまう。

(ちなみにこのシーンは 豪邸(ホテル?)でのパーティ模様。どうやら主催者は"ママキャス"のようで 友人たちと愉快に騒いでいる。”ママキャス"とは 当時ヒットを連発し ヒッピー文化フラワームーヴメントの象徴的人気コーラスグループ"ザ・ママス&ザ・パパス"のヴォーカル キャス・エリオットのことだ。
しかしこれにも特に説明描写はなく パーティで友人たちと談笑しながら歩く姿が映るだけなので 知らなければ『何この太った女?』というだけで終了)
 
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一方のイーストウッドは 同じくTV映画『ローハイド』で脇役ながらレギュラー出演。しかし少し名前が知られた程度で ハリウッドではスターになり損ねた。

そこで その後イタリアへ活路を求め "イタリア製西部劇=マカロニウェスタン"に出演するや 一気にブレイク 開花したというわけだ。
(ロウハイドのテーマ曲 ♪ローレンローレンローレン・・・♪ は一世を風靡?したなあ)

本作中で落ち目のディカプリオがイタリアへ行き イタリア製西部劇でめでたく再起する様は まさにイーストウッドそのものを投影している。
賞金稼ぎでスターになった点はマックイーンを イタリアへ行って復活する点はイーストウッドを とあからさまに良いとこ取りだ。
(本作中 ディ・カプリオにイタリア行きを薦めるプロデューサー役は なんとアル・パッチーノ!)
 
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前出のザ・ママス&ザ・パパスの大ヒット曲"California Dreamin'" 気持ちのいいコーラスと物憂げなフルートが印象的だった。しかしタランティーノはちょっとヒネって あえてフェリシアーノファージョンを使っている。
ホセ・フェリシアーノは盲目のギター弾き語り歌手。日本でもヒットを連発したプエルトリコ人で スパニッシュ・ギターの名手でもあった。作中では スペイン語を交えた渋く哀愁漂うフェリシアーノ節が流れる。
(今の人たちは "California Dreaminn’"そのものを知らなければ 映画でフェリシアーノヴァージョンが流れても 気づきようがない)
 
ブルース・リーは当時 やはりTVシリーズの『グリーン・ホーネットで主人公の相棒としてレギュラー出演していたということなので 知名度は上がり始めていたはずだ。『グリーンホーネット』撮影中のエピソードとして リーの動きがダイナミックで速すぎるため カメラの枠で捉え切れなかったというのがある。本作中の撮影所での一コマは既述した通りだが そのリーを一発でぶっ飛ばしてしまうピットはよっぽど強いということになる。タランティーノはブルース・リーが嫌いだったのか。
 
●車
車に対しても並々ならぬ愛着とこだわりを見せている
街中至る所に当時の車を走らせたり停車させたりしている。
 
主人公たちの車
 
ディ・カプリオにはスターらしく 「キャデラックドゥヴィル1966」
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クリーム色のボディにベージュの内装というセレブ感ぷんぷん。これに ご主人ディ・カプリオを乗せて転がすのがピットの仕事というわけだ。
このドゥヴィルはレザボアドグス1992にも登場させている。
 
そのピットが自分の愛車としているのが「カルマンギアコンバーチブル1964」だ。
●カルマンギア
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タランティーノは「子どものころ 義父さんにカルマンギアのような車でよく連れ出してもらった」と語っている。
 
映画の時代設定が1969年なので カルマンギアもまさに現役バリバリだったわけだが ピットの愛車は錆びサビのオンボロを使っている。
ボディはブルーグレイという渋いカラーを選択。ディ・カプリオのでかいドゥヴィルの隣に チョコンと止まっている様はじゃじゃ馬そのもの。仕事を終えたピットが このじゃじゃ馬コンバーチブルを駆って夕暮れのハリウッドをビンビン突っ走る様が爽快。
カルマンギアは Poor man's Porshe と揶揄される車だが キッチリ個性を主張する存在なので 貧乏でカッコいいピットの愛車にはぴったりというわけだ。
そしもちろん カルフォルニアらしく いつも屋根を開けっ放しのオープンスタイルだね。イイです。
 
こっちはキルビルでユマサーマンが乗っていた。
 
売り出し中の若手女優にぴったりのチョイス。
(実際乗っていたのか? )
 
そのシャロンを乗せてポランスキーが得意げに運転するのが なんと「MG−TD」
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当時既にヴィンテージであったろうオープンクーペだ。派手というかキザというか  ま ハリウッドだし  ポランスキー時代の寵児だったから許されるね。
(これも 実際乗ってたのか?)
 
リック(ディ・カプリオ)とクリフ(ブラッド・ピット)のモデルは バート・レイノルズハル・ニーダムだそうだ。スターと そのスタントマンという関係だ。
レイノルズは実際スターだったが ハル・ニーダムだってそこそこ出ていたんじゃなかったか。レイノルズは この映画に出演予定だったとか。
 
ファッションの対比もおもしろい。
ピットは 派手な黄色のアロハをラフにひっかけ 中は白Tシャツ 太いベルトにジーンズ それに履き込んだブーツという典型的タフガイスタイル。
(ベルトのバックルはどうやら 「スタント協会」の会員用のものらしい。小道具使いも細かいね)
 
方やディカプリオはヒドイ! 情けないほどの趣味ナシおじさんにさせられている。茶の革ジャンをキチンと!着てしまっているし 中には同系色のクルーネックのニット? おまけに下は折り目のついたスラックス!ときている。あゝ もう度し難いほどのオジサンスタイル。ピットとの対比を考えたんだろうね。

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シャロン・テイト役は これはもう当時の雰囲気そのまんまを体現。

黒の細身のハイネックニットに 白のタイトなミニスカート それに白のブーツ。バッグはシャネルだったらしい。
あるいはマキシのコートの下はホットパンツにブーツという60年代ファッションも見せている。
 バリバリ売り出し中の若手女優だからね。
 
実際  当時(60年代)のアメリカTV映画は花盛り。調べてみるとすごかった。というか ほとんどが日本の茶の間で放送されていたんだから そのことがすごいでしょ!
 
ルート66
サンセット77
ベンケイシー
拳銃無宿
ロウハイド
うちのパパは世界一
サーフサイド6
ドクターキルディア
ミスターエド
弁護士プレストン
ギャラントメン
とちげきマッキーバー
コンバット
ルーシーショー
じゃじゃ馬億万長者
バークにまかせろ
ミスターノバック
ティーデュークショー
逃亡者
わんぱくフリッパー
0011ナポレオンソロ
ミスターロバーツ
かわいい魔女ジニー
それいけスマート
FBIアメリカ連邦警察
シェーンTV版
グリーンホーネット
タイムトンネル
ニューヨークパパ
鬼警部アイアンサイド
ハワイ5-0
愉快なフレディー一家
 
これさあ 書き出してみたら なんとほとんど見てたんじゃないか! 我ながら驚くねえ! ホントかいな。
みんな日本のお茶の間でも放送されてたんだよ。当時 日本のTV局はどこも自局でドラマ制作はやれてなかったから アメリカTV映画を買い付けて流していたんだね。
 
私は マックイーンの『拳銃無宿』もイーストウッドの『ロウハイド』も毎週楽しみに見ていた子どもだったのだ。小学生か それとも中高生の頃だったのかねえ。アメリカ文化を無意識のうちに たっぷり吸収していたんだね。
音楽で言えば 完璧にBeatlesマニアで バンドもやっていたし没頭していた。しかしそれでも目の隅にはビーチボーイズだの サイモン&ガーファンクルだのは捉えていた。だから当然 ホセ・フェリシアーノもママスアンドパパスもよく聞いていたんだ。
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そう この映画はねえ 日本で夢のカルフォルニアを眺めていた世代にとっては 『あゝそうだったなあ』という映画なのでした。